


(上)見た目にも美しい立体曲線の連続が目を楽しませてくれる。細い梁だからこそ、美しい。(左)図書閲覧室を覆うのはドーム
状の荘厳な内装。天井からの光源は自然光だけである。(右)1847年竣工当時、ここに総ガラス張りの天井が生まれることを誰が
考えただろうか。
歴史と結びつく、美と高度技術
グレート・コートという大英博物館内部の中庭をご存
知だろうか。100m×70mの天井を総ガラス張りで覆った
明るく開放的なスペースで、雨の日や鳩が飛んできた
時などは、ロンドンという大都会の屋内で自然の楽し
さを享受できる、機能美あふれたレストスペースであ
る。この天井総ガラス張りという手法は決して新しい
ものではない。しかしながら、大英博物館のグレート・
コートのそれは他と一線を画す。使用されたガラスは、
なんと3,000枚。総重量は180tにもおよび、一切の太い
梁や張弦梁を使用していない。圧迫感を感じないやさ
しい日だまりは、極限まで減らされた鉄骨トラスの曲
線構造と高い設計技術から生まれた技術の結晶なの
である。膨大な蔵書量を誇る図書閲覧室を結ぶ中庭を
覆っているのは、美と高度技術の魂なのだ。産業革命
を生み出したイギリスという技術大国。それを知らし
めるに相応しい現代建築といえるだろう。