優雅な剣と光の翼が結ぶ過去と現在
輝かしい未来を構築するためには、過去を正しく理解し、連
綿と紡いできた歴史をたどる必要がある。テムズ川沿いに
は、対岸の新旧コントラストがおもしろいエリアが多く、ミ
レニアム・ブリッジを中心とした一画は、とくに素晴らしい。
Tubeのセントポール駅を下車してすぐに出会うのは、イギ
リス国教会のセント・ポール大聖堂。バロックを代表する建
築物である。テムズ川に出ると、独特の躍動感と浮遊感を持
ったミレニアム・ブリッジが、元発電所で現在は現代美術館
のテート・モダンまで続く。それぞれがバロック、アールデ
コ、ハイテクを代表する素晴らしい建築なのだが、たった
320メートルの橋が基軸となって、数百年の歴史を体系的に
振り返ることができるのだ。その理由は、ミレニアム・ブリッ
ジが「優雅な剣・光の翼」というコンセプトを持つように、ロ
ンドンが常に伝統を重んじながら未来を見据えているから
に他ならない。


(上)構造がシンプルな吊り橋のミレニアム・ブリッジは、独特の浮遊感を楽しむことができる。(下)そびえ立つ煙
突が象徴的な巨大なレンガの塊、テート・モダンはヘルツォーク&ド・ムーロンの作。